マウスピース矯正治療後の保定について
2022年4月1日
新年度が始まり、新しいことにチャレンジしようとお考えの方も少なくないことと思います。この機会に歯並びをきれいにしようとお思いの方は矯正治療についてさまざまなご検討をされていることと思いますが、目立たないながらも矯正治療の成功に欠かせない最後のステップである「保定」についてお話ししたいと思います。
■保定とは
保定というのは、矯正して整った歯並びを安定させて元に戻らないようにする目的で、矯正治療後の歯並びの後戻りを防ぐ簡単な装置(リテーナー)を使い、歯根周囲の組織が安定するまでの間、歯並びを固定していくことです。
歯並びがキレイになるとそれで安心してしまい、そこで治療は終わりだと考えてしまう方が残念ながら少なくありません。ですが、矯正治療後はさまざまな原因により歯並びが後戻りしてしまうことがあるのです。矯正治療のトラブルで「後戻りしてしまった」というケースには、保定がうまくいかなかったケースも少なからず見られます。
保定とは、矯正治療を終えてからも5年、10年経ってもキレイになった歯並びがいつまでも美しく健康なままで維持できるようにするための、大切な仕上げのプロセスといえます。
○保定の必要性
これまでにも何回か歯が動くしくみについてご説明してきましたが、歯並びはとても繊細なバランスで成り立っています。ですので、治療が終わって装置を外した後に何もしないで過ごすと、歯は矯正をする前の状態に戻ろうとするでしょう。
保定期間中には装置で歯が動かないようにすることに加えて、歯並びを悪くさせるような生活習慣も見直す必要があります。たとえば頬づえや睡眠時の体位のような気づかずにやってしまっていることも歯並びを悪くする習慣のひとつです。
身体を使った習慣だけではありません。唇や舌などにも気づかないうちに歯並びに悪影響を及ぼすたくさんのくせがあります。上下の歯が非機能的な接触を生じているブラキシズムと呼ばれる状態や、舌で歯を押してしまうくせ、爪を噛んでしまうくせといったものもそのひとつです。保定期間中の通院では、歯並びを悪くする癖をなおし唇・舌の正しい使い方を学ぶ指導(MFT)が受けられます。
○保定の期間
一般的に、保定装置は矯正にかかった期間だけ装着しておき、その後も就寝中は保定装置をつけるのが理想的とされています。しかし「保定」が終わってもリテーナーをしなくなると徐々に歯は動いてきます。それは自然な歯の移動があるからです。
保定期間は、リテーナーという後戻り防止装置を装着しながら通院していただきます。来院いただいた時には、
- リテーナーの調整
- 歯並びのチェックなど
- 口内の清掃やブラッシングの指導
- 歯並びに影響する癖の改善指導(MFT)
などを行います。
怪我をしたら徐々に元の状態に戻るのと同じように、歯も同様で、「元に戻るための力」が働くのです。予防するために、矯正治療が終わった後はリテーナーを一定の間つけて「現在の歯並びが正しい」という点を自分に教え込みます。保定はそれだけ重要なことなのです。
当院では保定が不十分で後戻りしてしまった歯の再矯正プログラムをご提供しています。詳しくはホームページ「後戻り矯正プログラム」をご覧ください。(リンク)
■保定装置の種類
保定装置は大きく分けて「固定式」と「取り外し式」の2タイプに分けられ、患者様の症状などを考慮して最も良い保定装置を選びます。両方選択するケースもあります。
それぞれの特徴をひとことで申し上げると、固定式は針金が歯についている間、歯は動かないで後戻りを防ぐために助けてくれます。取り外し式は、患者様に後戻り管理が任せられます。マウスピース型の矯正に慣れた方にとっては矯正装置の頃と同じように歯磨きや飲食の時以外は装着するといった取り外し式リテーナーの動作はなじみのあるものかもしれません。
○固定式 (フィックスリテーナー)
前歯の裏側に細いワイヤーをつけて固定するため、後戻りに対する抑止力が期待できます。フィックスリテーナーでは、前歯6本あるいは小臼歯を含む合計8本を固定するのが一般的です。
フィックスリテーナーは一旦装着すると自分では取り外せないのですが、それほど大きなものではなく意識しなくても長時間保定できるメリットがあります。その一方で、リテーナーの接着部分などが歯磨きしづらくなってしまい、汚れや歯石が溜まりやすく虫歯や歯周病のリスクが高まるデメリットもあります。
○取り外し式 (可撤式リテーナー)
取り外し式リテーナーは歯の表側にワイヤーが通って、内側をプラスチックで囲むように作成されていて、”ホーレーリテーナー”や”ベッグリテーナー”がとくに有名です。取り外し式リテーナーはマウスピース型矯正装置のように、食事や歯磨きの時など必要に応じて外すことができるのが魅力ですが、厚みがあり慣れるまでしゃべりにくかったり、表側のワイヤーが見えて人目が気になったりします。
○透明なクリアリテーナー(インビジブルリテーナー)
マウスピース型矯正装置インビザライン®️のような透明なリテーナーも存在します。このクリアリテーナーは透明なプラスチックで、矯正が終了した時の歯型を包み込んで作成します。クリアリテーナーも取り外し式リテーナーの一種ですが、ほかの取り外し式のリテーナーとの大きな違いは、なんといっても薄いこととワイヤーがないために快適に使用できること、全体を包み込み治療終了時の歯並びを維持しやすいことがあります。さらに食いしばりや歯ぎしりをある程度防止する働きもあります。
クリアリテーナーはマウスピース型矯正装置と同じように咬む面も覆っているため保定の安定性が高まるのですが、長く使うと劣化してしまうので再作成が必要となる場合があります。
■ インビザライン専用保定装置のご紹介
インビザライン®️を開発したアラインテクノロジー社では、インビザラインで矯正された方向けのリテーナーも開発しています。このビベラリテーナーはインビザラインと同じように見た目の良さや耐久性の高さに定評があるリテーナーです。
ビベラリテーナーの特長は、
- 目立ちにくく透明
- 取り外し式で清潔
- 高い強度
- 歯列データを記録・保管可能
- クリンチェックデータをもとに作れる
- インビザライン以外で治療を受けた患者様も利用できる
- ポンティックやリンガルバーにも対応
といったところが挙げられます。
■ 「歯並びと咬み合わせの専門家」である当院にご相談ください
今日は、矯正終了後の「保定」というプロセスのご説明をいたしました。治療の後にまだあるのか、とお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、整った歯並びは「美しい」のはもとより、「機能的」でもあり「健康的」「衛生的」とも言えます。すこやかで明るい人生を楽しむ上でも、今一度ご自身の歯がどれだけ大事かを見つめ、矯正治療という選択肢と向き合ってみてはいかがでしょうか?
当院では患者さまのさまざまな疑問や悩みにお答えしようと、毎月5名様限定で「矯正治療」に関する個別無料相談、セカンドオピニオンを実施しております。詳しくは当院ホームページ(リンク)をご覧ください。